配偶者の社保加入で得られるメリット
はじめに
結婚して家庭を築くと、夫婦の生活設計を考える上で欠かせないのが「社会保険」です。社会保険は、病気やケガ、老後の生活など、人生のさまざまなリスクから家族を守る制度です。特に、配偶者が被扶養者として社会保険に加入できるかどうかは、家計の安定や将来の年金額に大きく影響します。
「配偶者が社会保険に入ると、どんなメリットがあるの?」
「扶養に入れる条件って?」
「税金や将来の年金にどう関わるの?」
この記事では、こうした疑問を解消するために、配偶者の社会保険加入による具体的なメリットを詳しく解説します。制度の基本から、家計やライフプランに与える影響まで、7,000文字程度で徹底的に掘り下げていきます。
1. 社会保険の基本構造をおさらい
まずは、配偶者の加入メリットを理解する前に、社会保険の仕組みを整理しておきましょう。
社会保険は大きく分けて以下の5つで構成されています。
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健康保険(医療保障) 
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介護保険(40歳以上対象) 
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厚生年金保険(老後・障害・遺族保障) 
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雇用保険(失業時の保障) 
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労災保険(業務上のケガ・病気保障) 
このうち、配偶者が「扶養」として加入できるのは主に 健康保険と厚生年金 に関わる部分です。
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健康保険の扶養に入ることで、保険料を払わずに医療保障を受けられる。 
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厚生年金の第3号被保険者になることで、老後の年金を自分で負担せずに確保できる。 
これが、配偶者が社会保険に加入する最大のメリットです。
2. 配偶者が扶養に入れる条件
次に「どんな人が配偶者の社会保険に入れるのか」という条件を確認しましょう。
2-1 健康保険の扶養条件
被保険者(夫または妻)の健康保険に配偶者を扶養として入れるには、次の条件があります。
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収入要件: 
 年収130万円未満(60歳以上や障害者は180万円未満)。
 ※月収に換算すると約108,334円未満が目安。
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被保険者の収入に依存していること: 
 世帯収入の中心が被保険者側である必要があります。
つまり、パート・アルバイトで働く場合でも、収入が一定基準を超えなければ扶養に入れる仕組みです。
2-2 厚生年金の第3号被保険者
国民年金制度上、以下の条件を満たすと「第3号被保険者」として年金に加入できます。
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厚生年金に加入している配偶者に扶養されていること 
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年収130万円未満(上記の健康保険と同基準) 
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20歳以上60歳未満 
これにより、保険料の自己負担なしで国民年金に加入できるため、将来の老齢基礎年金が保障されます。
3. 配偶者が社会保険に加入するメリット
ここからは、具体的なメリットを整理していきましょう。
3-1 医療費の自己負担が軽減される
健康保険に入ると、医療費は自己負担3割(小学生未満や高齢者はさらに軽減)。扶養に入っていれば、配偶者は自分で保険料を支払わずに同じ保障を受けられます。
さらに、
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高額療養費制度 
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出産育児一時金・出産手当金(条件あり) 
といった給付も対象となるため、医療リスクに対して安心度が高まります。
3-2 保険料負担がゼロで保障を得られる
扶養に入る配偶者は、社会保険料を自分で負担する必要がありません。
これは大きな家計メリットです。
仮に国民健康保険+国民年金を自分で払う場合、
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国民健康保険料:約10万〜40万円/年(所得に応じる) 
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国民年金保険料:月額16,610円(2025年度)=年間約20万円 
合計すると、少なくとも30〜60万円程度の負担になります。
扶養に入れることで、これをまるごと節約できるのです。
3-3 将来の年金が保障される
配偶者が「第3号被保険者」になれば、国民年金の加入者としてカウントされます。つまり、保険料を払わずに 老齢基礎年金を満額受け取れる可能性 があるのです。
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国民年金の満額(2025年度):年間約80万円(1人分) 
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40年間加入が必要だが、第3号期間も「保険料納付済み」として扱われる 
専業主婦(夫)でも、将来しっかりと基礎年金を受け取れる仕組みになっています。
3-4 税制上のメリット(配偶者控除・配偶者特別控除)
社会保険上の扶養に入れる条件(年収130万円未満)とは別に、税金面でも「配偶者控除」や「配偶者特別控除」が使えます。
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配偶者の所得が48万円以下(給与収入103万円以下)なら「配偶者控除」適用 
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所得が48万円超〜133万円以下なら「配偶者特別控除」が段階的に適用 
つまり、扶養に入れば社会保険料の負担ゼロ+税制優遇というダブルのメリットが得られます。
4. 働き方と社保の関係(130万円・106万円の壁)
配偶者が社会保険に入るかどうかは、「働き方」次第で変わります。
4-1 130万円の壁
年収130万円を超えると、被扶養者から外れ、自分で国保・国民年金に加入する必要があります。
4-2 106万円の壁(社会保険適用拡大)
2024年10月以降、一定の企業(従業員101人以上)では、年収106万円以上で社会保険加入が義務化されています。
条件は以下の通り:
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週20時間以上勤務 
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月収8.8万円以上(年収106万円相当) 
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学生でない 
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勤務先の規模が一定以上 
この場合、自分で保険料を払う必要はあるものの、厚生年金に加入できるため将来の年金額は増えます。
5. 配偶者が社保に入ることのデメリットは?
一見メリットばかりに見えますが、注意すべき点もあります。
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働く時間や収入が制限される 
 → 扶養に入るために「年収130万円未満」に抑えると、キャリアや収入アップの機会を逃す可能性があります。
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厚生年金の保障は限定的 
 → 第3号被保険者は「基礎年金のみ」。厚生年金部分はないため、将来の年金額は配偶者に比べて少なくなります。
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将来的な制度改正リスク 
 → 社会保険の扶養制度は見直しの議論が続いており、今後条件が厳しくなる可能性もあります。
6. ライフプラン別の活用法
6-1 専業主婦(夫)の場合
最大のメリットは「保険料負担ゼロで年金がつく」こと。家計の負担を最小限にしつつ、将来の年金を確保できます。
6-2 パートで働く場合
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年収106万円未満 → 扶養に入る方が得 
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年収106万円以上 → 厚生年金に入れるなら、自分で加入して将来の年金増額を狙う選択肢も有利 
6-3 共働きフルタイム
双方が厚生年金・健康保険に加入するため、扶養の概念は適用されません。その分、老後の年金は夫婦合わせて手厚くなります。
7. まとめ
配偶者の社会保険加入は、家計と将来の安心に大きく寄与します。
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医療保障を無料で受けられる 
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保険料負担なしで年金を確保できる 
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税制上のメリットも享受できる 
一方で、収入制限や将来の年金額の違いといった注意点もあります。
大切なのは、家計とライフプランに合わせて「扶養に入るのか、自分で加入するのか」を選択することです。制度を正しく理解すれば、より安心で有利な選択ができます。
