パート・アルバイトでも加入できる?社保の加入条件
はじめに
社会保険と聞くと「正社員が入るもの」というイメージを持つ方は多いのではないでしょうか。確かに、以前はパートやアルバイトの方が社会保険に加入できるケースは限られていました。しかし、少子高齢化や働き方の多様化を背景に、近年は社会保険の適用範囲が拡大されており、一定の条件を満たせば短時間労働者でも加入が可能になっています。
本記事では、パート・アルバイトの方が社会保険に加入できる条件を中心に、制度の基本から最新の改正内容、加入によるメリット・デメリット、手続きの流れまで詳しく解説します。
1. 社会保険とは?基本の仕組み
社会保険は、私たちの生活を守るセーフティネットです。主に以下の5つの制度を指します。
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健康保険:医療費の自己負担軽減や傷病手当金の給付など
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介護保険:40歳以上が対象。介護サービスを受ける際の費用負担軽減
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厚生年金保険:将来の年金額を増やす仕組み。障害年金・遺族年金も含む
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雇用保険:失業したときの給付や教育訓練給付
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労災保険:業務中や通勤中のケガ・病気の補償
このうち、パートやアルバイトに関わってくるのは主に 健康保険・厚生年金保険・雇用保険 です。労災保険は雇用形態に関わらず自動的に適用されます。
2. 社会保険に加入できるパート・アルバイトの条件
(1) 原則的な条件(週30時間以上勤務)
もともと、社会保険(健康保険・厚生年金保険)に加入できる基準は「週の所定労働時間が正社員の4分の3以上」とされていました。一般的に 週30時間以上勤務 していれば対象となります。
例:正社員の所定労働時間が週40時間なら → 30時間以上で加入義務
(2) 適用拡大の条件(短時間労働者向け)
2016年以降、段階的に適用範囲が拡大され、週20時間以上勤務でも一定の条件を満たせば加入できるようになっています。
短時間労働者が加入対象となる条件は以下の通りです。
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週の所定労働時間が20時間以上あること
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月額賃金が8.8万円以上(年収約106万円以上)
※基本給+諸手当が対象、残業代・通勤手当は含まれない -
勤務期間が2か月を超えて見込まれること
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学生でないこと(例外あり)
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勤務先が従業員101人以上の企業であること(2024年10月からは51人以上に拡大予定)
この5つすべてを満たすと、週20時間勤務のパート・アルバイトでも社会保険に加入できます。
(3) 雇用保険の条件
雇用保険は健康保険・厚生年金保険とは異なり、週20時間以上勤務かつ31日以上の雇用見込みがあること が条件です。企業規模は関係ありません。
(4) 労災保険
労災保険は、雇用されて働く人すべてに自動的に適用されるため、パートやアルバイトでも必ず加入しています。
3. 社会保険適用拡大の流れ
ここ数年、国は短時間労働者の社会保険加入を進めています。主な改正の流れを整理しましょう。
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2016年10月:従業員501人以上の企業で週20時間以上勤務者も対象に
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2022年10月:従業員101人以上の企業へ拡大
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2024年10月:さらに51人以上の企業へ拡大(予定)
将来的には、企業規模要件が撤廃され、すべての短時間労働者に適用される方向性といわれています。
4. パート・アルバイトが社会保険に加入するメリット
(1) 医療面での安心
健康保険に加入すると、医療費の自己負担が3割で済むだけでなく、病気やケガで働けなくなった際の 傷病手当金 を受け取れる場合があります。
(2) 将来の年金額が増える
厚生年金に加入すると、国民年金だけの場合より将来の年金額が増えます。また、障害年金や遺族年金の保障も厚くなります。
(3) 雇用保険で失業時も安心
雇用保険に入ることで、失業したときに失業給付を受けられます。教育訓練給付や育児休業給付など、ライフイベントに応じたサポートも受けられます。
(4) 税金面でのメリットも
社会保険料は所得控除の対象になるため、確定申告や年末調整で税負担が軽減されます。
5. デメリットや注意点
(1) 手取りが減る
最大のデメリットは、社会保険料の負担です。給与から健康保険料・厚生年金保険料が天引きされるため、手取り額は減少します。
(2) 扶養から外れる可能性
配偶者の扶養に入っていた場合、社会保険に加入すると扶養から外れることになります。その結果、配偶者の保険料負担が減る一方で、自身の負担が発生します。
(3) 勤務時間の調整が必要なケースも
「106万円の壁」「130万円の壁」といった収入基準を超えると社会保険に加入する義務が生じるため、家庭の事情によっては勤務時間の調整が必要になります。
6. 加入手続きの流れ
パート・アルバイトが加入条件を満たした場合、手続きは基本的に 勤務先の会社が行います。本人が役所に行く必要はありません。
必要となる主な書類は以下のとおりです。
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基礎年金番号がわかるもの(年金手帳や基礎年金番号通知書)
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マイナンバー
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雇用契約書など勤務条件を確認できる書類
会社が日本年金機構や健康保険組合に手続きを行い、後日保険証が交付されます。
7. 加入するかどうか迷ったときの考え方
社会保険への加入は「手取りが減る」というデメリットだけを見ると損に思えるかもしれません。しかし、長期的に考えると将来の年金増額や医療・失業時の保障があるため、トータルでの安心感は大きいものです。
また、働き方によっては「扶養のまま働く」か「社会保険に加入してしっかり働く」かを選べるケースもあります。家庭の収入全体やライフプランを踏まえて選択することが大切です。
8. よくある質問(Q&A)
Q1. 学生でも社会保険に加入できますか?
原則として学生は対象外ですが、昼間の定時制・夜間学生など一部例外があります。
Q2. 複数のアルバイトを掛け持ちして条件を満たした場合は?
社会保険は1つの勤務先での労働条件を基準に判断します。掛け持ちを合算することはできません。
Q3. 加入を拒否することはできますか?
会社は条件を満たす従業員を社会保険に加入させる義務があります。本人の希望で加入を拒否することはできません。
まとめ
パートやアルバイトでも、一定の条件を満たせば社会保険に加入できます。
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原則は「週30時間以上勤務」
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適用拡大で「週20時間以上・月8.8万円以上・従業員101人以上の企業(今後51人以上へ拡大)」でも対象
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雇用保険は企業規模に関わらず「週20時間以上」で加入可能
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加入すれば医療・年金・失業時の保障が手厚くなる一方、手取りが減る点に注意
短期的な収入だけでなく、将来の安心まで考えると、社会保険加入は大きなメリットをもたらす制度です。自身の働き方とライフプランに合わせて、賢く選択していきましょう。