国民年金基金とiDeCoの違い
どちらを選ぶべきか?併用のメリットも解説
はじめに
老後の生活資金をどのように準備するかは、多くの人にとって共通の大きな課題です。特に自営業者やフリーランスといった第1号被保険者の方々は、会社員のように厚生年金による上乗せがないため、国民年金(基礎年金)のみでは老後資金が不足しがちです。
その不足を補うための代表的な制度が「国民年金基金」と「iDeCo(個人型確定拠出年金)」です。どちらも老後資金づくりを目的とした公的な制度ですが、仕組みや特徴には大きな違いがあります。
この記事では、両制度の違いを分かりやすく整理し、「どちらを選ぶべきか」「併用するメリットはあるのか」について詳しく解説します。
1. 国民年金基金とは?
1-1 制度の概要
国民年金基金は、自営業者やフリーランスなど国民年金第1号被保険者が、老後の年金を上乗せするために加入できる公的な年金制度です。
「国民年金に上乗せする公的年金」という位置づけで、国民年金基金連合会が運営しています。
1-2 対象者
- 
国民年金第1号被保険者(20歳~60歳の自営業者、フリーランス、無職の人など) 
- 
任意加入被保険者(60歳以上65歳未満で国民年金に任意加入している人) 
※厚生年金加入者や第3号被保険者(会社員の扶養配偶者)は加入できません。
1-3 掛金と給付
- 
掛金:選択した給付型に応じて毎月定額を拠出(最低1口から加入可能、月額1口1,000円~数万円)。 
- 
給付:終身年金または確定年金として受給。 
特徴は「終身年金を選べる」点で、長生きリスクへの備えになります。
1-4 税制優遇
- 
掛金は全額「社会保険料控除」として所得控除できる。 
- 
受け取るときは「公的年金等控除」の対象となる。 
2. iDeCo(個人型確定拠出年金)とは?
2-1 制度の概要
iDeCo(個人型確定拠出年金)は、自分で掛金を積み立て、自分で運用商品を選び、その成果に応じて将来受け取る年金額が変わる制度です。
こちらも国が制度を設けており、加入対象は幅広く、自営業者、会社員、公務員、専業主婦(主夫)などほとんどの人が加入可能です。
2-2 対象者と掛金上限
- 
自営業者(第1号被保険者):月額68,000円が上限 
- 
会社員(企業年金なし):月額23,000円が上限 
- 
公務員:月額12,000円が上限 
- 
第3号被保険者:月額23,000円が上限 
※国民年金基金に加入している場合、iDeCoの掛金上限は「月額68,000円」から国民年金基金・付加年金の掛金を引いた残額となります。
2-3 運用と給付
- 
自分で定期預金・保険商品・投資信託などから選んで運用。 
- 
運用結果次第で将来の受取額が増減する。 
- 
受給は60歳以降、一時金(退職所得控除適用)か年金(公的年金等控除適用)で受け取る。 
2-4 税制優遇
- 
掛金は全額「小規模企業共済等掛金控除」として所得控除。 
- 
運用益は非課税。 
- 
受給時にも所得控除がある。 
3. 国民年金基金とiDeCoの違い
ここで両制度を比較表にまとめてみましょう。
| 項目 | 国民年金基金 | iDeCo | 
|---|---|---|
| 運営主体 | 国民年金基金連合会 | 国民年金基金連合会+金融機関 | 
| 加入対象 | 自営業・フリーランスなど第1号被保険者 | 原則20歳以上65歳未満のほぼ全員 | 
| 掛金上限 | 月額68,000円(iDeCoと合算) | 職業に応じて上限あり(自営業は最大68,000円) | 
| 運用方法 | 固定型(給付が決まっている) | 自分で投資商品を選択 | 
| 受給方法 | 終身年金 or 確定年金 | 60歳以降、一時金 or 年金 | 
| 給付額の安定性 | 保証あり(終身年金も可能) | 運用成果に依存(保証なし) | 
| 税制優遇 | 掛金全額が所得控除(社会保険料控除) | 掛金全額が所得控除(小規模企業共済等掛金控除)、運用益も非課税 | 
4. メリット・デメリット
4-1 国民年金基金のメリット
- 
将来の給付額が確定しており安心。 
- 
終身年金を選べるため「長生きリスク」に対応可能。 
- 
掛金は全額控除で節税効果が高い。 
4-2 国民年金基金のデメリット
- 
中途解約ができない。 
- 
掛金が定額なので柔軟性がない。 
- 
インフレに弱い(給付額が固定されるため)。 
4-3 iDeCoのメリット
- 
運用益が非課税で複利効果を最大化できる。 
- 
掛金を自由に変更可能(最低5,000円から)。 
- 
金融商品を自分で選べるため成長余地がある。 
4-4 iDeCoのデメリット
- 
元本保証がない(投資信託などはリスクがある)。 
- 
原則60歳まで引き出せない。 
- 
運用が苦手な人には不向き。 
5. どちらを選ぶべきか?
選択のポイントは「安定性」か「柔軟性・成長性」かです。
- 
安定性を重視する人 → 国民年金基金 
 「必ずもらえる額が決まっていて、長生きしても安心したい」人に向いています。
- 
資産形成を積極的に行いたい人 → iDeCo 
 「インフレに対応し、運用で資産を増やしたい」人に適しています。
6. 併用のメリット
実は、国民年金基金とiDeCoは併用が可能です。ただし、両制度の掛金の合計で月額68,000円までという上限があります。
併用するメリット
- 
国民年金基金で「安定収入」を確保しつつ、iDeCoで「資産運用による成長」を狙える。 
- 
双方の税制優遇を活用できる。 
- 
終身年金(国民年金基金)+資産運用(iDeCo)でバランスの取れた老後資金形成が可能。 
7. 加入を検討する際の注意点
- 
将来の収入見込みや生活設計を考慮して無理のない掛金を設定すること。 
- 
インフレや運用リスクを踏まえて、複数の制度を組み合わせること。 
- 
iDeCoは金融機関によって手数料や商品のラインナップが異なるため比較が必要。 
- 
国民年金基金は一度加入すると基本的に解約できないため慎重に判断。 
まとめ
国民年金基金とiDeCoは、いずれも老後資金を準備するための有効な制度ですが、その特徴は大きく異なります。
- 
国民年金基金:安定した給付、終身年金が魅力 
- 
iDeCo:運用次第で資産を増やせる、柔軟性が高い 
「安定を取るか、成長を狙うか」、あるいは「両方を組み合わせるか」が選択の分かれ道となります。
老後の安心を得るためには、一つの制度に依存せず、両方をバランスよく活用することも有効な選択肢です。税制優遇を最大限に活かしながら、自分に合った制度設計を考えていきましょう。
